★現代舞踊を中心に周辺領域にも触れる形でまとめよう。新世紀初頭の勢い溢れる若手作家の表現の台頭をこれまでに形成された既存の枠組みではなく次の10年を見据えたさらに新しい枠組みやオルナティヴな視線で考えていくことが求められている。その表現は暗い世相とはいえ明るいものが多い。テクニックと表現の歩み寄りが見えるようになってきたのも一つの傾向だ。現代ダンス全般でもコンセプチャルな作風に対する反動か力強い身体表現が好まれてきている。<中略>大御所で折田克子、芙二三枝子、藤井公・利子、山田奈々子、森嘉子、そして旗野恵美が力作を送りだした。不穏な世相の中とはいえ戦争を体験した今日の大家たちがいずれも平和へのメッセージをこめた作品を多く発表しだしていることは重要なことだ。<後略>吉田悠樹彦
★< 前略>
山田奈々子の「帰幽」も注目したい作品だ。この作品は作家の弟に捧げられた作品だ。山田を中心に人の一生と壮大な時の流れが刻みだされた。高田系ならではの力強いスペクタルである。<中略>昭和から平成にかけての時代の流れと舞踊の歴史、そして芸術家たちの絶え間ない創作への情熱を感じた夏の夕べであった。
吉田悠樹彦様<音楽舞踊新聞>より
★日本の現代舞踊界を代表する「第三十五回現代舞踊展」(東京新聞主催)が十一、十二の両日、東京都港区のメルパルクホールで開催された。本展の総評を舞踊評論家の福田一平氏に語ってもらった。
★現代舞踊が全国的な広がりを見せている中で、新進からベテランまでが競う同展。今年の特徴は、未来への不安ゆえか、自己確認の大事な思考を舞踊で示そうとする創作が多かったように思う。<中略>印象に残ったのは、山田奈々子の「帰幽」。亡き弟への思いをつづったものだが、残された初老の女性の今までに出会った人々や過ぎ去った時間を、万感を込めて舞踊に結んでいた。個と群舞の象徴作品だが不思議な共感を覚えさせた。 東京新聞夕刊より
★(ゆるぎないベテラン勢の作品)
二日間にわたって計二十八作品が上演された。関東地区を主体に現代舞踊界の各世代を代表する舞踊家が選抜され、若手から中堅、ベテランへとプログラムが組まれている。作品のコンセプトや動きのスタイルが若手とベテランでは異なっており、その傾向が見えて面白い。まずベテラン陣、さすがに総体としてしっかりと自己を確立しており、印象に残るものが多い。各日のトリは折田克子とアキコカンダ。折田は石井みどりに捧げる「グリーンフィールド」。折田自身が師であり母である石井みどりを時にイメージさせて、群舞とともに祈り、その継承を誓う。カンダは「追想のマラゲーニャ」で曲想を生かしながら多くのダンサーを駆使して自分の世界を創造する。さらに、亡き弟真二に捧げた山田奈々子の自分を中心としたスタイルをつらぬく「帰幽」<後略>オン・ステージ うらわまこと氏
★感動しました。人間の生と死の神秘・・・そのようなものを感じました。強さ、美しさ、儚さ・・・が表現されていたと思います。次の舞台も楽しみにしています。 工藤様
★とても素晴らしい舞台でした。可愛くて、綺麗で、美しく、奈々子さんらしさが存分に発揮されて心から楽しませて頂きました。奈々子さんの髪だけが黒くて、他の人が皆グレーなのも意味深かったです。中略
タイトルは「幽冥界に帰ってしまった人たちの事を思う心」の意味だけではなく、奈々子さん自身が、幽冥界に帰るのではなく、そこから帰って来た事を、そしてそこで得た物で更に飛躍する事を約束しているように思えました。期待しています。 小澤様