ジョイントリサイタル<力強く、充実し、個性的な作品が並ぶ>
年はじめに現代舞踊の大家たちは次々に作品を発表した。不透明な時代の中でも彼らは創作活動を続けている。和田寿子、藤里照子、山田奈々子によるジョイントリサイタルはそれぞれの出自の流派や年代でもなくおのおのの舞踊と向かいあったような内容だった。
山田の「ウソツキ」では立体的な構成と共に金髪の作家が踊る。シンメトリーなど基本的な構成を用いてダンサーの動きを最大限引き出している充実した作品だ。その若き日も想像させる作風である。<中略>3人による「三重奏partⅡ」は櫻の下で踊るという設定だ。朗らかでありながらも創作を鋭くみつめた表現で戦後世代の原風景とその現在形がくっきりと示された。<中略>現代舞踊の大家たちは混迷する時代の中で強靭な想像力で作品を生みだし続けている。「創作」それは無限に続く挑戦であり、未来への遙かな道筋である。
吉田悠樹彦氏<音楽舞踊新聞>
ジョイントリサイタル反響
感激の一言で、今も感動の余韻が残っている感じです。真っ暗な客席が、舞台をより際立たせ、時には神秘的に、時には優雅に。踊りがあんなにも深い精神性をも表現していることに驚きました。そして引き込まれました。使用されていたモーツアルトの曲やカンツオーネなども美しく、ありがとうございましたと申しあげたいです。また拝見したいです。 宗美津子様
ジョイントリサイタル反響
「ウソツキ」はとても可愛らしくおしゃれで楽しかったです。特に、誰かをだましているのがはっきり分かるような振りはないのだけれども「人に調子を合わすのが上手で、ノリはいいのだけど、どこかウソっぽい人」の雰囲気がよく出ていて「ああ、こういう人っているなー」と妙に納得してしまいました。先生が、何となく憎めない可愛らしい「ウソツキ」の存在を、好感度たっぷりに表現されていて、見ていても楽しかったし、後味もいい感じでした。この作品も、先生独特の都会的なテーストに包まれていますね。コミカルで可愛らしいのだけれども、すごく粋でスマートです。
今回の「三重奏PARTⅡ」はブラックユーモアたっぷりの前回の「三重奏」とは対照的に、洗練されたサラリとしたユーモアに溢れている印象を受けました。ああいった比較的サラッとした感じで(そう見えるだけで、実際は綿密な計算があると思いますが)踊れば踊るほど、その踊り手独自の本来持っている円熟味がよく表れて素敵でした。若い時は、踊りに力が入りがちですが、やはり、何でもかんでも、ただ力を込めればいいわけではないのだなと、あらためて感じました。三人の先生方は、それぞれ、踊り方や感性が異なっていて、とても興味深いです。特に、全く同じドニゼッティの「人知れぬ涙」の曲での踊りの競演は面白かったです。しかし、お互いに感性がそれぞれ全く違いながらも、全体としては、すごくいい感じのハーモニーで溶け合っていて、この「三重奏」も「PARTⅢ」が見てみたいです。私の印象では、今回は5年前の俳優座の時よりもさらに、3人の先生方の息が合っていていい雰囲気でした。しかし、今回もやはり山田先生の可愛らしさが目立ってました。先生は「華やかなスター」の雰囲気をお持ちなので、舞台が一段と華やぐ感じがして、見ていて心が浮き立ちます。
無限に湧き出ているのではないか、と思ってしまうほどの先生の作品の構成力と創造力にただ、ただ、驚嘆してます。今回の舞台は多くの人達に、パワーと感動はもとより「素敵に生きるとはどういうことか」の問いを投げかけたことと思います。感動的で心温まる公演をありがとうございました。 松本奈々子様
ジョイントリサイタル反響
お洒落で、セレブで、ハイセンスで、コミカルなところもあり、ちょっぴりセンチな、とっても素敵な舞台でした。
旦那が亡くなってから6年、それぞれ豊かな生活を送っていたことでしょう。でも時にはあの頃の事を思い出すのでしょうか。時に反発し合い、そしていたわり合いながら生きていく。そんな中に3人のそれぞれの性格が出ていて、これは本性なのかもしれないなどと思いました。お揃いのショールと椅子は、3人それぞれへの贈り物だったのでしょうか。でも、PART1を見ていなくても充分楽しめる舞台でした。むしろ私のように深読みしないほうがよかったのかもしれませんね。
それにしてもベテラン3人組、掛け合いの見事さ、すばらしい間の取り方、表情もポーズも生き生きとして、どんどん引き込まれていきました。3脚の椅子とショール、背景は満開の桜ですか。これだけの道具だけで、こんなにも素晴らしい物語を繰り広げる。さすがです。小澤純一様
ジョイントリサイタル反響
先日の公演とてもすばらしかったです。三重奏Ⅱでは迫力と存在感に圧倒されました。ますますパワーアップした舞台また期待しています。 工藤規親様
08年の<現代舞踊>
現代舞踊を中心に周辺領域にも触れる形でまとめよう。新世紀初頭の勢い溢れる若手作家の表現の台頭をこれまでに形成された既存の枠組みではなく次の10年を見据えたさらに新しい枠組みやオルナティヴな視線で考えていくことが求められている。その表現は暗い世相とはいえ明るいものが多い。テクニックと表現の歩み寄りが見えるようになってきたのも一つの傾向だ。現代ダンス全般でもコンセプチャルな作風に対する反動か力強い身体表現が好まれてきている。<中略>大御所で折田克子、芙二三枝子、藤井公・利子、山田奈々子、森嘉子、そして旗野恵美が力作を送りだした。不穏な世相の中とはいえ戦争を体験した今日の大家たちがいずれも平和へのメッセージをこめた作品を多く発表しだしていることは重要なことだ。<後略>吉田悠樹彦